私は男を見る目がないらしい。
 

その手はあの頃よりも骨ばっているけど、力加減とか動きとか、全く変わらない。

朔太郎のことを好きだった時の記憶が蘇ってきて、胸をきゅっと甘く締め付ける感覚が私を襲い始めた。

……って、何これ?

何か、むずむずするっていうか、変な気分がするんだけど……何だろう……?

自分でも理解できない気持ちに私は首を傾げた時、ふっと力が抜けたように笑いを止めた朔太郎が私に目線を移した。


「……はぁ、疲れた。これ、今年一年分、笑い終えたな」

「いや、笑いのツボが全くわかんないから。何なの」

「ん?まぁ、俺だけがわかってればいいんだよ。気にすんな。それより……なぁ、美桜」

「え?」

「言っときたいことあるんだけどさ」

「え、何?」


あんなに爆笑していた朔太郎が急に真面目な顔をしてきたから、私は何となく構えてしまって、ちょっと後ずさってしまう。

何を言われるんだろうか?

 
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