私は男を見る目がないらしい。
 

「無理矢理同棲したのだって美桜を俺のものにしておきたかったから。社会人になってから丸3年がむしゃらに働いてきたのもあって蓄えはあったから、本当は住む家もお金も困ってなんかなかったけど、一緒に暮らして長い時間美桜と一緒に過ごせば、美桜の心は俺のものでいてくれると思ったんだ。3ヶ月一緒に暮らして、それが叶ったと思ってた。……自惚れてたんだ、美桜の心は絶対に俺から離れないって」

「……」

「あとはこの前話した通り。俺のちっぽけなプライドが引き起こした結果が、これだ」


自惚れなんかじゃない。

朔太郎の作戦勝ちだ。

私の心は、いつもそばに居てくれる朔太郎のことでいっぱいだったから。

でも、だからこそ、突然姿を消されたことがグサリと心に突き刺さる。

……それがどんな理由であっても。


「……やっぱり信じてもらえねぇか?」

「……」

「……だよな。わかってたけど……いざそうなると……はぁ」


少しだけ朔太郎の手に力がこもったかと思えば、その手はするりと離れてしまう。

熱から解放された私の手はまだひんやりとしている部屋の空気に包まれた。

 
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