私は男を見る目がないらしい。
 



マンションに帰りついたのはいつもより倍以上の時間がかかってしまい、会社を出てから30分後のことだった。

何度も何度も休みながら、ようやく帰ってこれた。

少しだけ“タクシーで帰れば良かったかも”と後悔した。

部屋の鍵を開け、靴を脱ぎながらいつもと同じ場所に鍵を置く。


「は~……ただいまぁ……」


私は誰もいないはずの部屋に向かって、ぽつりと言う。

今は朔太郎も仕事に行っていて誰も部屋にはいないというのに、何となく癖で「ただいま」と言ってしまったのだ。

いつもなら私が帰ってくる頃には朔太郎はすでに帰ってきていて、笑顔で迎えてくれるから。

……って、朔太郎が奥さんみたいじゃん。

料理だって、結局は半分以上してくれてるもんな……。

朔太郎と復縁して、一緒に住み始めてから2ヶ月が経って。

この部屋にいる時はいつも朔太郎もいるから、“一人”ということに何だか寂しさが私を襲った。

……そして、それと共に数分前に治まっていた痛みの波も、再び私を襲い始める。


「……っん~っ、痛いぃ……っ」


お腹を押さえながら、壁づたいにフラフラと部屋の中に入る。

ズンズンと痛む下腹部と身体のあまりのだるさに、身体がふかふかのベッドを求めている。

早く横になりたい。

 
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