恋物語。




「さすが井上さん。大人で余裕があって憧れるなぁー…」


またも、うんうん。と納得したように頷いた。



「あ……あの、慎一くん…」



「はい。何ですか?」


名前を呼ぶと彼は可愛らしい顔をこちらへと向ける。



「実は…相談したいことがあって…」



「相談…?俺でよければ何でも聞きますよ?言ってみて下さい。」



「あの、ね……?男の人、って…何をプレゼントしたら…喜ぶんですか…?」



「……井上さんですか?誕生日とか?」



「と……クリスマス…」


私は自分の言ったことに恥ずかしくなって俯き眼鏡のフレームを触った。



「…その二つが近いんだ?」



「うん…」




近いっていうか…当日っていうか…。




「んー…そういうことか…何がいいんだろうな…?」


彼は独り言とも取れることを呟く。




実は…このことを相談するのは慎一くんが初めてで…だから内心、かなりドキドキしている…。
どんな答え、てか…ヒントでもいいの…。何か“きっかけ”になるアドバイスをくれれば…。




「あ…!ネクタイとか、どうすか?」



「え…?ネクタイ…?」


慎一くんのひらめきに顔を上げ彼を見た。



「はい。井上さんて…たまにスーツにネクタイで会社来るんですよ。その時って絶対って言っていいほど取引先への挨拶周りの日が多くて。それに…」



「…それに?」


変な間をあける慎一くんに首を傾げた。





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