恋物語。
ピンポーンッ
『…はい。……まぁ、わざわざありがとうございます。今、開けますね?』
その時、オートロックのインターホンが鳴る音が聞こえてきてお母さんが、その受話器で誰かと話していた。
あ…誰か来たんだ…。お客さんかなぁ…?
ピロリンッピロリンッ
『はーい。』
ガチャ…ッ
次に家のインターホンが鳴る音が聞こえてお母さんがドアを開けた模様。
『あんな子のために、わざわざありがとうございますー』
んん…?“あんな子”って…?まさか私のこと…!?
誰が来たのか探りたいけど来た人の声が全く聞こえないから推測できない。
『ささ、入ってください。こちらです。』
ガチャ…ッ
お母さんがそう言う声が聞こえたあと部屋のドアが開かれた。
「知沙~?……聡さん、来てくださったわよ?」
「っ…!!!!!」
まだ姿の見えない“彼”の名前をお母さんから聞いて心臓が飛び出るかと思った。
「…こんばんは。」
するとすぐ、“彼”が姿を現す。
だけど今の私は眼鏡をかけていないため…どういう表情をしているのか全く分からない。
「それじゃあ、ゆっくりしていって下さいね?」
「はい、ありがとうございます。」
聡さんがそう言うと、お母さんは部屋を出ていきドアは閉められた。つまり…只今、密室に二人きり。
ドキドキドキドキ…ッ
「知沙…大丈夫…?」
聡さんはそう言いながらベッドの傍まで来て、その端に腰を下ろす。
「あ……はい…っ」
“とりあえず起きよう”と瞬時に思った私は起き上がる。
「別に起きなくてもいいのに。」
「いいんです…一回、起きようと思ってたから…」
っていうのもあるけど…寝たまま、上から見られるのは耐えられないと思った。…はっきり見えてないけど。