恋物語。
「だーって、ほんとのことじゃん!違うの?違わないの!?」
「ちっ……違わない、です…」
うぅ…もうダメだ…何言っても勝てないよ…。
てか朱里に勝てた試しなんてないけどさー…。
「でしょ!?まぁでも…お互い好きじゃなくても、そういうこと出来る人って世の中にはいるしねー?」
「え…?それってまるで……私が好きじゃないみたいな言い方…」
朱里のその言い方に私は拍子抜け。
だって私っ…そんな易々と許すような人じゃ…っっ
「え?じゃあ好きなの?」
「えぇ!?そ、それは…分からない…」
言い返すと…また痛い所を突かれてしまった。
「じゃ、じゃあ…井上さんが…嘘、言ってるとか…?」
「それはないでしょ。だって最近の井上さん、何か変わったもん」
恐る恐る言葉を発すると朱里からは自信満々な声が聞こえる。
「え…?そうなの…?」
私には…全く同じに見えるんだけど…。
「うん。なーんかね…前より優しくなったっていうか…前よりモテてるっていうか…」
「も…っ!?!?」
朱里の発言に思わず吹き出す。
や、やっぱり…モテるんだよね…?てか前よりって…どんだけなの…!?
ブー…ブー…ッ
「あ、知沙。携帯なってるよ?」
「あ、うん。ちょっとごめん」
負のオーラに包まれそうだった時ちょうど、テーブルの上に置いていた携帯のバイブがなり画面を確認。
「っっ!?!?!?!?」
こ…こんなタイミングって…ある…!?
「知沙ってば、なに驚いてんの?出ないの?」
相当ビックリしているであろう私の顔を見た朱里にそう言われる。
だって…だって、だって…!!着信の相手は…っっ
「…井上さん、だ…」
「えぇー!?待って待って!なら早く出なよ!!!」
「う、うん…」
相手が誰かを知った朱里にそう促されて通話ボタンを押した。