恋物語。



―――――――。




―あの話を“彼女”から聞いた。



でも…二人に変わった様子なんて感じないし…当事者である“彼”だって…―。





「……どうしたんすか?井上さん。」



「…あ、いや。何でもない。」


“当事者”の彼――純也から声をかけられて、そう返事をする。
今は次の企画に向けての会議のための準備を純也としていた所だ。



「そうですか…?で、ここなんですけど…」



「…うん。」


純也が指差す、企画書の項目を見る。



「もっとこう…キャッチーにした方がいいと思うんですよ。どう思います?」



「え、あぁー……うん、確かにそうかもしれないな。このターゲットは一人暮らしをする若者だったし。」



「ですよね…?じゃあ、付け足しておきますね。」


彼はそう言って、シャーペンでその企画書にメモを書いた。




こいつに限って…そんなことはないと思うんだけどな…。




「…なぁ純也。」



「何ですか?」



「…彼女とは上手くいってる?」



「え!?何ですか、急に!」


直接すぎる言い方に純也は、かなり驚いた表情を見せる。



「え…?確かお前らって結構長かった気がして…違ったっけ?」



「あぁ…確かに長いですかねー…?」


純也は考えながらそう答える。



「どれぐらい…?」



「…もう2年です。」



「2年かぁ…で。上手くいってるの?」



「上手くって…。まぁそうですかね?」


純也の答えは…何だか曖昧に聞こえた気がした。



「ふーん……まぁ大事にしろよ?彼女のこと。」



「分かってますって。ちゃんと大事ですから、朱里のことは。」


だけど…そう言う純也の顔は柔らかな表情をしていて…




知沙…キミが言っていたことは…何かの間違いだと思うよ…?
純也はちゃんと…“彼女”のことを、想っているはずだから――。





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