きみの、手
知り合いかな?
足を止めて見るという行動からそう思い、彼の表情を覗き込む。
「…、」
けれど彼女を見つめる眼差し、それは切ないような悲しいような、初めて見る瞳。
その目一つで、わかった。彼女がただの知り合いなんて言葉では済ませられない相手だということ。
「…元恋人、ですか?」
「……」
聞いていいのかわからない、そう思いながらもボソ、と問いかけた私にその目は驚いたようにこちらに向いた。
「…何で、」
「目で分かりますよ。先輩って意外と分かりやすいんですね」
「……」
へへ、と笑う私に彼は言葉を飲み込むとまた屋上へ向かい歩き出す。
『元恋人』、意外なその存在に少し驚いてもしまうけれど、彼だってそれなりの年齢。誰一人とも付き合ったことがないというわけでもないだろう。
聞きたい、けど聞きたくない。だけど聞きたい。彼についてのことなら何だって。私はその欲求を抑えきれない。