きみの、手



でも最初は『無理』の一点張りだった彼が、頭ひとつでも触れるくらいになったんだもん。それだけでも、よかった。

そう、よかった。よかったんだよ。

そう言い聞かせる度に、泣きそうになってしまうけれど。





「真中」



するとその時、突然呼ばれた声に足を止めた。

見れば廊下の角、階段の踊り場に立つ城田先輩の姿。その表情はいつも以上に不満げだ。



「先輩…?」

「お前、昼何でこなかったんだよ。おかげで俺、昼飯抜きだったんだけど」

「…だって、その」



何て説明すればいいのか、言葉の続きを躊躇ってしまう。けれど問いただすように真っ直ぐにこちらを見るその黒い瞳に、逃げられずにいる。



「…先輩が彼女さんと上手くいってたら、お邪魔かなとか、思いまして」

「は…?」

「気持ち、伝えたんですよね?」

「……」



そして彼は何かを考えるように少し黙って、あー、と髪をかいた。



「何誤解してんのか知らないけど、俺があいつに伝えたのは、『ごめん』って言葉」

「…え?」

「拒んで傷付けたこと、ずっと謝りたかったから」

「謝、り…?」



彼が彼女に伝えたかった気持ち

それは『好き』じゃなくて、『ごめん』?




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