きみの、手
「あの日あいつのことを拒んで傷付けて、だけど謝れないまま終わって…それだけがずっと心に残ってた。付き合ってた間の幸せな時間より何より、泣き顔ばっかり思い出すんだ」
「……」
「お前の言った通り。言えない気持ちを引きずってた」
彼が引きずっていた気持ち、心に残していた光景。
そこから、歩き出すために
「…だから勇気を出して謝ったら、笑われたよ」
「へ?笑われた?」
「『そんなこともう気にしてない。だから気にしなくていい』って。その言葉にめちゃくちゃ安心したし、つかえがとれた」
「……」
はは、と笑った彼にこの胸にも込み上げる安心感。
そっか。だから…そっ、か。その気持ちから思わず泣きそうな顔になる私に、先輩は首を傾げる。
「?どうした?そんな顔して」
「いえ、あの…私はてっきり、先輩がまだ彼女さんを好きなのだとばかり、思ってまして…」
「はぁ?何でそうなるんだよ」
「だって先輩のあんな切ない顔見たことないですもん…だから、」
「……」
本音を話すうちに余計に泣きそうになってしまう。彼はその言葉からだいたいを察したらしく、ふっと笑う。