好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
「とりあえずー。
ちょっと待ってね、飲み物は用意しとこ。
喉渇くもんねー」
あかりさんはリビングに続いていくキッチンへ入って行き、冷蔵庫を開ける。
「あー、涼しい。
冷蔵庫の中に入りたいわ」
そんなこと言いながらあかりさんは中からペットボトルに入った紅茶を取り出した。
「つぐみちゃん、紅茶大丈夫?」
「あ、はい!何でも大丈夫です」
「よかった。
じゃあ、これと……」
ふんふーん、と鼻唄を歌いながらあかりさんは次々とお盆に飲み物やお菓子を載せていく。
「つぐみちゃん、夏休みはどこか行くの?」
「今度友達と遊園地行こうって話してるんですよ」
「あー、あのネズミのところ?」
「はい、そうです」
「いいなー。
あたしも誰か誘っていこうかなー」
なんて、世間話をしていると……どこからかトン、トンという音が聞こえてきた。
何の音だろう?と思いながら耳を澄ませていると、あかりさんがあちゃーと言いながら頭に手をあてた。
「あかりさん?」
トン、トンの音がどんどん大きくなっていく。
え……待って。
この家、あたし達以外誰もいないんだよね?
え……ちょっ……
「ごめん、つぐみちゃん。
誰もいないと思ってたんだけど……」
あかりさんの言葉を遮るように、ガチャリと音がしてリビングのドアが開けられた。