好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
ようやく瀬戸が足を止めた場所は、見晴らしのいい土手だった。
まるで人気がなくて、あたし達二人だけの場所。
瀬戸は草が広がる土手の傾斜の真ん中あたりまで行き、そこで腰を下ろした。
あたしもその隣に座る。
「ここね、すげー花火が綺麗に見えるの」
「そうなの?」
「そ。こんなとこ、人がいてもおかしくないんだけどさ。
みんな神社の奥の高台の方に行っちゃうんだよな。
だから、ここは穴場」
そう言いながら瀬戸は笑う。
そのまま、まだ握られたままのあたしの手へと視線を移す。
「平野の手ってすげーちっちゃい」
「え、そう?」
「……もうちょっとだけ、こうしてていい?」
……わざわざ確認してくるなんて、瀬戸らしくない。
忘れてたー、なんて笑ってずっとこうしてそうなのに。
「……花火が終わるまででいいから」
暗がりなのに、瀬戸の頬がほんのり色づいているのが分かってしまった。
何だかあたしも照れ臭くなって……目を合わせられないまま、小さく頷く。
隣から瀬戸がほっと息をついたのを感じた。