STORMILY
「あっ」


しかしすぐに、焦ったような声を上げる。


「しまった。今何時だ?」


左手を上げて腕時計を確認し、「やっば。もう行かないと」と言いながら、まだ食べかけのおにぎりや中身が入ったペットボトルを慌ただしくビニール袋に詰め込み始める。


「ごめんな。俺の自分語りに、長々と付き合わせちまって」


「あ、いえ、そんな…」


「庄井はもうちょっとゆっくりしてけよ。それじゃ、また明日」


すっくと立ち上がり、片手を上げて笑顔でそう挨拶すると、先生は慌ただしく屋上を去って行った。


何だか今日は、とても濃密な時間を過ごしてしまったな…。


先生の激動の人生が垣間見える、衝撃的な話の数々。


私なんかが聞いてしまって、良かったんだろうか?


そんな風にぼんやりと物思いに耽っていた私は、ふいに我に返る。


いけない。


私だってそんなにのんびりとはしていられないんだから、さっさとお弁当を食べなければ。


そう考え、私はずっと握ったままだったお箸を改めて持ち直すと、先ほどのリベンジとばかりに、迷いなくミートボールをつまみ上げ、素早く口内へと運んだのだった。
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