STORMILY
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玄関ドアを開けた瞬間ドキリとした。


ここ数週間はずっと、近所のコンビニにお酒を買いに行く時以外は一日中ルームウェアのままで、昼寝をしているかお酒片手にぼんやりとテレビを眺めているかだったお母さんが、珍しく、きちんと外出着に着替え、化粧も施し、ダイニングテーブルに腰かけていたから。


「あ、た、ただいま」


慌てて帰宅の挨拶をしたけれど、お母さんは私をチラリと一瞥しただけで、すぐに視線を自分の手元に戻した。


「ど、どこか、行ってたの?」


私はスリッパを履き、ダイニングテーブルに近付きつつ、めげずに質問を繰り出す。


「…銀行行って来たのよ。あの男からの入金がある日だから。それで年金支払って、食料も仕入れて」


「そっか…」


お母さんの座っている場所から微妙に距離を開けて立ち、私は自分でもひきつっているのが分かる笑顔を浮かべながら大きく頷いた。


実の母親との会話だというのに、何故こんなにも緊張するのだろうか…。


近付いて分かったけど、お母さんは銀行の通帳を開いて手にし、テーブルの上にはお財布と年金の領収証書、レシート等が乗っていた。
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