STORMILY
授業は受け持たれていないし、部活や委員会などの接点もない。


約一ヶ月間、ほんの数十分、昼食を共にしていただけの間柄なんだから。


「今までありがとうございました。さよならっ」


言いながら、私は先生の脇を素早くすり抜け、自分の下駄箱へと向かった。


「え?おい、庄井!?」


背後からの先生の声を全力で無視し、急いで靴を履き、自転車置き場へと駆けて行く。


鍵を解錠し、サドルに跨がると、勢い良くペダルを踏み込んだ。


走り出して間もなく、ずっと堪えていた涙がとうとう溢れ出し、頬を伝って落ちて行く。


それを乱暴に手のひらで拭いながら、ユラユラと揺れる景色を切り裂くように、私はただひたすら、ペダルを漕ぎ続けた。


いつもは20分以上かかる道のりを、おそらく過去最短記録で走り切り、無事アパートにたどり着く。


駐輪場の所定の位置に自転車を停め、酷使して尿酸が溜まりまくりの両足を何とか頑張って動かし、階段を上がって部屋へと向かう。


「おかえり」


ドアを開けた瞬間投げ掛けられたその声に、思わず小さく飛び上がってしまった。
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