STORMILY
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自転車で20分かかる距離を徒歩で移動したわりには、疲れはまったく感じられなかった。


正確には、そんな感覚はすでに麻痺していた。


グラウンドで、青春の汗を流している運動部員達を横目に、私は足早に乗降口まで歩を進め、上履きに履き替えると、まっすぐ屋上へと向かう。


扉を開けて一歩足を踏み出した所で、念願の場所にたどり着けた喜びに、自然と笑みがこぼれた。


やはり地上とは質の異なる空気を深く吸い込みながら、遠くに視線を投げる。


考えてみたら、この時間にここに来るのは初めての経験だった。


1日の内で太陽が最も高い位置にある昼食時と、日が傾き始め、遠くに見える山の稜線がほのかに橙色に染まるこの時間帯とでは、同じ場所でもだいぶ趣が変わって来る。


最後に、見慣れた景色の別の表情を知る事ができて、とても嬉しい。


私はそんな幸せを噛みしめながら、扉を出た地点から手すりに沿って前に進み、校舎のちょうど真ん中くらいの位置に来た所で立ち止まった。


向いているのは多数の生徒や教師が部活動を行っているグラウンド側ではなく、北側の、中庭に面している方。
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