STORMILY
……いや。


こんなもんじゃない。


私の心の中はこの何十倍も何百倍も、荒れ狂っている。


激しく降り注ぐ、涙の雨で濡れている。


でも、それもすぐに終わるから。


私は意を決し、手すりに手をかけた。


「庄井」


その時、私を呼ぶ声がした。


一瞬空耳かと思った。


だけどとても無視する気にはなれなくて、私は声のした方向に急いで視線を向ける。


思った通り階段室の扉の前には、穏やかな笑顔を浮かべた加賀見先生が立っていた。


「ど、どうして……」


「いや、職員室から何気に外を見たら、庄井が乗降口に向かってテクテク歩いて行く姿が見えたからさ」


先生はのんびりとした口調で解説した。


「何か忘れ物でもしたのかな、と思って引き続き事務処理をこなしてたんだけど、しばらく経っても帰って行く様子がなかったから。もしやと思って来てみたら、やっぱりここに居た。どうしたんだ?こんな時間に」


……何てこと。


よりによって、最後の最後に加賀見先生に会ってしまうなんて。


せっかくここまで盛り上げた、負の感情が…。
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