STORMILY
嗚咽に邪魔されながらも、私は先生に訴え続けた。


「お願いだからもう、私を楽にさせて下さい」


「……分かった」


先生はそう呟くと、私が苦労して乗り越えた手すりを難なく飛び越え、目の前に降り立った。


一瞬の出来事で、抗う暇もなかった。


右腕を強く引かれ、気付いた時には私は先生と向かい合って立っていた。


「だったら、俺と一緒に飛ぼう」


「………え?」


「俺と一緒に、あっちの世界に行こう」


言いながら、先生は腕を掴んでいた手を移動させ、今度は私の右手のひらを強く握りしめる。


「な、何を言ってるんですか?」


思わぬ展開にパニックに陥りながらも、私は必死に言葉を繰り出した。


「先生は別に、死ぬ必要なんか、ないじゃないですかっ」


「あるよ」


「ないでしょ!ふざけないで下さい!」


「ふざけてなんかいない」


手を振りほどこうともがく私を制しながら、先生は囁いた。


「庄井が居ない世界なら、留まっていても意味がない…」


その力とは相反する、あまりにも穏やかで静かな声音で。


「愛する人においてけぼりにされる人生なんて、俺だってもう、いい加減うんざりなんだよ」
< 61 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop