ただ、そばにいて
ぼんやりと考えを巡らせていた私は、首の後ろに違和感を覚えて我に返った。

振り向くと、何やらナツの手が首に回されている。



「アサ姉は昔から恥ずかしがり屋だな」

「え?」

「服なんて着なくていいのに」

「……あ!」



クスッと笑うナツが何を弄っているのかわかった途端、顔に熱が集まる。

そういえばこの水着、ホルタータイプだから首の後ろにリボンがついてるんだった……!


隠そうとしても無駄だというのに手で隠そうとする私に、ナツはおかしそうに笑う。

そして、セミロングの髪をハーフアップにした私の頭をぽんぽんと撫でた。



「でも、そうやって恥じらうところも可愛いんだけど」



──あぁもう、何なの昨日から。

突然女の子みたいな扱いをするから、私の心臓は休む間がないじゃない。

ハタチそこそこの男に、こんなに心を揺さ振られるなんて。


……そう思いながらも、嬉しくないわけがなく。

私は口元を緩めながら、立ち上がるナツの隣に並び、ペンションへの道のりを二人でゆっくりと歩くのだった。


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