ただ、そばにいて
私が泣いているのを見た翔吾は、驚いたように少しだけ目を見開き、私の腕を押さえていた手の力を緩める。



「ごめん翔吾……もう終わりにしよう?」

「好きなヤツでも出来たか」



これ以上この関係を続けることは出来そうもなく、終末の言葉を告げると、翔吾は淡々とした口調で返してきた。

俯いた私は、静かに首を横に振る。



「違う……ずっと前から好きだったの」



それを聞いた翔吾は、「俺はお役御免ってことか」と言い、ふっと微笑を漏らした。

きっと彼も、私が寂しさを紛らわすためだけに関係を持っていたことに気付いていたんだろう。



「気になるな、朝海がどんなヤツを好きなのか。会社の同僚とか、上司? それか友達の紹介とか……」

「いとこだよ」



……初めて、他人にこのことを告白した。

どうしてだろう。友達にも言えないことが、翔吾にはサラッと言えてしまう。

さっき以上に驚いた様子で一時停止する彼に、私は涙を拭って自嘲気味に笑う。



「おかしいよね。いとこを好きになるなんて……」

「まぁ、別にいいんじゃん? 俺は博愛主義者だから気にしねー」



ざっくりとした返しに今度は私がぽかんとして、思わず笑ってしまった。

こんなふうに楽観的な人だから、一緒にいても苦じゃなかったのかもしれない。

私の想いを否定しないでくれたことが、とてもありがたかった。

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