ただ、そばにいて
心ここに在らずな私を誰も気に留めることはなく、食材もお酒もどんどん消費していった。

いつもはどこか物足りないと思う、それほど親しいわけではない友人達との当たり障りのない会話も、今はちょうどいいかもしれない。


ぽつぽつと雨が降り出し、そろそろ終わりにしようという流れになった頃。

片付けもほぼ終わったところで、私はバーベキュー場に設置されたトイレへ向かう。

その間の数分で雨は強さを増し、トイレを出る時には完全な雨降りとなっていた。

もう、なんで急に……!

元の場所まで走るか、と足を踏み出そうとした時。



「待ってよ、翔吾くん……」



雨音に混じって甘ったるい声が聞こえ、その名前に反応して身体が固まった。



「もうこれで解散になるんだからいいだろ」

「そうだけど……」

「何か問題ある?」



あの男……やっぱり他の子にも手を出してたのね。

トイレと売店の間の狭い空間を覗き見ると、翔吾と今日の集まりに来ていた女子が、今にもキスしそうなくらいぴったりとくっついている。

本当にメスなら誰でもいいのかしら……と呆れながら、見なかったことにしようと顔を背けた。……けれど。



「だって翔吾くん、朝海ちゃんと付き合ってるんじゃないの?」

「生憎、あいつには逃げられたよ。好きなヤツがいるって」



突然私の名前が出されて、再び神経は二人へ向いてしまう。

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