ただ、そばにいて
夢……そう、これは夢だ。

こんな都合のいいことがあるわけない。

ナツに“朝海”と呼ばれて、好きだと言われるなんて──。



「……からかってる?」

「からかってなんかない」

「彼女、いないの? エリカさんは?」

「エリカはただの友達。適当に彼女作った時もあったけど、朝海じゃなきゃダメだって思わされるだけだったよ」



苦笑するナツだけれど、私を愛おしそうに見つめるから、また涙が溢れてくる。



「私達……いとこだよ? 他人には気持ち悪いって思われるかもしれないんだよ?」

「そんなのどうだっていい。悪いことしてるわけじゃないんだから。それより……朝海がどう想ってるのか聞かせてよ」



私の濡れる髪を掻き上げ、冷たい頬を包み込む彼の手に、自分の手をそっと重ねる。



「私も……もう限界」



少し高くなってきた波が砂浜で壊れる音は何度も繰り返して、気持ちをせき止めていた壁をも崩していく。



「ずっと、もっと近付きたいって思ってた。こうやって触れて、抱きしめてほしいって。……私も、ずっと好きだったよ」



言い終わった瞬間、待ちきれないとばかりに強く抱き寄せられ、躊躇うことなく唇を重ねた。


初めて味わうお互いの唇は、濡れていても熱くて、たしかな愛がここにあると感じられる。

雨のシャワーも、遠くで聞こえる雷鳴さえも、私達を祝福してくれているように思えるほど──今、最高に幸せだ。


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