新選組異聞 幕末桜伝
「相変わらずだね。やっぱり、自分を見せるのは怖い?」

山南が、さくらの腹を探るように問う。


「怖いというか、ただ、必要性を感じないだけです。解る人だけ解ってくれればいい。私は、新選組で馴れ合おうなんて思っていません。隊士に疎まれていようが、関係ない。

刀を握る時は、結局は一人ですから。」

さくらが心を許し、本音を語るのは沖田と山南と近藤の三人だけだった。それ以外の隊士とは、口を聞く事もなければ、目を合わす事すらない。隊内での自分の立場の危うさを理解しながらも、その姿勢を変えようとはしなかった。

つまらない意地と言ってしまえばそれまでだが、さくらには自分を封じ込めてでも、思い出したくない過去がある。心の内にしまい込んで、二度と出てこないよう、何重にも鍵をかけた過去が。それを暴かれないように、さくらは鉄壁の鎧で身を固める。


いつか鍵を開けて解き放たれる事を何よりも恐れながら。

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