謝罪のプライド

「今はもうこだわりはないかな。亜結は仕事も続けたいだろうし。無理ないくらいで一人か、……まあホントは二人は欲しいけど」


膝の頭がわずかに動いて表情が見えなくなった。


「亜結がその気になるまでは待とうかなって」


清水さんの声に合わせて、亜結はどんどん私の膝に顔を埋めていく。
可愛いな、恥ずかしがってるのかしら。

“でもね、このわがまま娘はあなたに避妊され続けることは不満のようですよ”
喉まで出かかった言葉は咳払いをして飲み込んだ。

それを告げるのは亜結の仕事だ。
頑張れ亜結。
旦那がイイ人過ぎる人ってのも案外大変なんだなぁ。


しんみりしていたところで、清水さんが爆弾発言を落とす。


「でも知れば知るほど亜結って子供みたいなとこあるからさ。ぶっちゃけ今はそれで満足しちゃってるから、特に焦ってないって感じかな。亜結が母親になるっての想像付かないし。……あ、これ亜結に言ったら怒られるから、内緒ね、初音ちゃん」

「……はあ」


ごめんなさい。
内緒は無理だと思う。

だって、さっきまで可愛らしく赤くなっていた頬の色は薄っすらと白んでいて、小刻みに震えているもの。
これって感動の震えじゃないわ、多分。


「まあ、後は二人で頑張ってください」


一応、寝たふりを続ける亜結に敬意を評し、これだけにとどめておく。

頭を撫でてあげてるのは、一応応援のつもりよ? 


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