深海魚Lover
「親父、カシラがみえました」

「カシラ?

 若頭はワシのはず……」

「何をおっしゃいます

 イズモのぼっちゃんですよ」

「イズモ

 ああ、イズモか

 ウダ、起こしてくれ」

「はい」

右田に手を借りて上体を起こした父親は、背もたれに弱った体を預けて出雲の方を見た。

ギロリと見つめるその眼光の鋭さに

「イズモ……」

名を呼ぶその深い声に

幼い頃に刻み込まれた恐怖心が呼び起こされる。


見つめられて動けなくて、息苦しい……


「イズモ、聞こえてるのか!
 
 もっと近くに来なさい

 早くしないか」

「はい

 お元気そうで」

ベッドの傍に立つ、出雲。

「ははっ、これのどこがぁ
 
 何、お前にはそう見えるのか?」

くっきりと刻まれたシワにシミが厳つい男をもっともっと厳つくさせる。

「イズモ、お前って奴は!」

そう言いながら、振り上げた手を下ろす父親。

叩かれる……
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