深海魚Lover
冷ややかな出雲の視線に凍りつく安寿は、さっきの車内での峰の言葉を思い出していた。

安寿(蓉子)の父親・楼が彼女に会いに行くことを知った峰は、安寿に過去の二人の関係をもう一度口止めする為に現れた。

そして話は出雲の話へと流れ、出雲が二代目加瀬組組長になることを渋っている今、彼の恋人となり出雲が組長を辞退するように一押ししてほしいとのことだった。

『愛する女に組長になる事を
 嘆かれてまで自分が望まない
 道に進むことはしないだろう

 ヨウコよ、おまえが敵側に
 いれば何とも心強い

 あれだけの大所帯、外側から
 壊すより内側から壊した方が
 手っ取り早いわ』

『壊す、壊すって
 イズモ、若頭をどうするの?』

峰の言葉に不安になった安寿は、つい悲愴な表情を浮かべてしまう。

『そんな顔をしなくとも何もヤツに
 情けなど感じることはない』

頬に触れる峰の分厚い手から距離を取り逃れる、安寿。
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