深海魚Lover
後を追って駆けて来た彼女の息はあがっている。

「ハァハァ

 イズモ、待ってよ」

「触んなよ」

ボソッと呟いた冷たい声。

「イズモ?」

「アンタも大変だなぁ

 好きでもない男に股開いて
 アイツ等のご機嫌取りかよ」

パチンッ!安寿が出雲の頬を思いっきり打った音が街に響いた。

「ちょっ君!アニキッ」

「バカにしないでよ」

出雲の頬を打った手をギュッと強く握りしめる安寿の瞳には薄らと涙が光る。

「誰もバカにしちゃいねえよ

 極道なんぞに関わってる以上
 女を武器にする
 それもひとつの手だ」

「イズモ……」

「なあ、アンジュ

 俺をおとして
 俺の何が知りたい

 奴らに近づけって言われたんだろう?」

「アニキ、奴らって?」

「近づいて俺をどうする?

 俺を殺す?」

「えっ、そうなんすか?」

安寿に向かってそう問いかける、充。

「違う、私はそんなこと思ってない

 私は……」
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