深海魚Lover
結婚----

その言葉に、私は京次さんに極道の世界に戻るのかと問うことをやめにした。

京次さんの口から話してくれるその時まで私は聞かなかったことにする。

京次さんに気のある女性達のことも気にしない。

水溜りがそこに在ったことさえ忘れて、私はその道をコツコツと足音を響かせて歩く。

京次さんと潤司君との未来に心を弾ませて。

家族になる

----そんな幸せ時

畳の上に敷かれた布団、腰掛けた貴方の膝の上に私は乗り座ったままに抱き合う。

その肩にこの腕を回し、触れる唇

触れて触れて、長いくちづけ

感じる……

続かない息に、離れた唇

目を開けた私の視線の先に見えた窓の外に広がる闇夜。

その夜空のどこにも月はなく

ただただ見渡す限り真っ黒、黒色のペンキで塗りつぶされた様。

シーンと静まり返った闇夜の静寂に、私達は今包まれる。

何ひとつ纏わない、無防備な姿で……

何だかとっても怖い。

この夜に、二人きり飲み込まれてゆきそう。

その時だった!

私の首筋に触れた貴方の温かい手の感触に、私はハッと我に返る。
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