深海魚Lover
そして、抱き寄せられたその腕の力強さに怖さなんて吹き飛んでゆく。

「芽衣子」

愛する人……わたしはあなただけを見てる。

見つめ合う視線

触れ合う唇

熱い貴方の口づけに押され後ろへと倒れた私の背を受け止める、ふわふわと柔らかな感触。

誘う、香り

横たわる私に感じる重み

それは、貴方の全て……

「……アイシテル」

温まる心に体……ひとつに溶け合う。

甘い時に、果てる----


だけど、時は待ってはくれなくて

この時、愛の囁きも交わしたくちづけも愛し合ったことも

この瞬間から、全てはもう過去のこと。


手と手が触れ合い、どちらからともなく優しく繋ぎ

すーっと眠りにつく私達の知らぬ間に、雨はまた降り出し地面を濡らす。

ぐっすりと眠る私達には聞こえることのない雨音。

吹き荒れる強風に気象警報が出ていたことを知るのは、ずっと後のこと……


少し開いた窓から室内へと流れる風によってふんわりと大きく膨らんだカーテン。

ひらりひらりと靡くカーテンを押さえた私は、窓から空を見上げた。
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