深海魚Lover
「ああ泣いたこと?
 言わないよ、心配?

 僕、口はかたいよ
 安心して」

「そっか……」

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京次と一緒に辿り着いた家の前、出雲はホッと安堵の息を零した。

開かれた扉----汚れた靴を脱ぐと、靴下まで汚れている。

「中に入らないの?」

「いい、オレはここで 

 じゅんはへやに
 つれて行ってやって」

「本当にいいの?」

「ああ」

「イズモ、まさか君
 また出て行く気じゃ」

「出て行くかよ、つかれてムリ」

「本当に?」

出雲を見つめる真剣な眼差しの京次。

寂しげなその瞳の奥……

「ああ

 しつこいぞ」

「フフッ、おやすみ」

「もう、朝だっつーの」

閉まる部屋の扉----


俺は汚れた姿じゃ布団で眠ること申し訳なくて、ここ・玄関先で眠ることにした。

固い床の上に体を横たえると、冷たくて心地よい。

だけどそれは最初のうちだけ、俺の体温がどんどん浸透してゆく----

熱く、熱く、べたつく……

だけどそれも、俺には居心地が良い。

熱く熱く滾る血----

落ちる睡魔の向こう側

眠る俺の体、深い海に沈み行き、辿り着いた先は暗黒の世界。

そこは心底、静かな場所だと思っていたがそれは違う。
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