深海魚Lover
「こちらこそ、よろしくお願いします」

ひょんなことから、隣同士で書道をすることになってしまったライバルの私達。

この間の言い合いといい、何とも気まずい空気。

助かったのは、今が書道教室の時間であったこと。

おかげで彼女と会話をしなくて済む。

余計なことは考えずに集中集中。

隣で黙々と毛筆で写経を進める彼女の字はとても綺麗で、自分の字を見た私はとても恥ずかしい気持ちになった。

違う写経用紙にもう一度最初から書きなおした方がよさそう。

そう思った私は書く手を止めて用紙の端をつまんだ。

これは捨てよう……

するとその時、京次さんの手が私の用紙を押さえた。

「ケイジさん?」

「綺麗に書くことも大切ですが
 そこにばかり囚われずに
 まずは心を静めて
 素の自分のままで書き
 その字を見つめてみましょう

 直すのはそれからでも遅くない

 芽衣子、君の字はとても繊細で儚げ
 あの個性的かつ躍動感溢れる君の
 絵とは正反対だね

 でも、それもまたいい、君の持ち味
 の一つだよ」
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