深海魚Lover
意図が分からず立ちつくす黒須の肩を、横田はポンポンと優しく叩く。

「奴等に気づかれる前に行くぞ

 場所を変えて話そう」

厳つい風貌の男達を乗せた車は走り出し、他の車に紛れ消えてゆく。

垣村から連絡を受けた右田は、出雲に充の無事を知らせる為に連絡を取るが全く取れなくて胸騒ぎがする。

「カシラの身に何か……」

出雲がまさか緒澤組に捕らわれているとも知らず行方を捜す者達。


ただ時間だけが過ぎてゆく----


そんなことが起きていたなどつゆ知らず、私と京次さんは書道教室を終えた後昼食を軽く済ませ、とある場所へ来ていた。

小さな一軒家、軒先には使い古した鉢植えがいくつも重ねられている。

「まあまあ
 よくいらしてくださいました
 さあ、どうぞどうぞ中へ」

「はい、お邪魔します」

「少し早く着いちゃった
 お父さんは居る?」

「居るよ、あっち

 はじめまして、姉がいつも
 お世話になってます
 弟の晴登です」

「はじめまして、井原京次と言います」

「かっこいいっすね、頭
 極まってますよ」

「ありがとう

 君も素敵だよ」

「でしょう、最近パーマかけたんすよ」
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