深海魚Lover
「あの、ケイジさん
 イズモさんに何かあったんですか?」

「いやっ、どうってことじゃ……
 
 芽衣子、すまないがジュンジを迎えた後
 二人で先に帰ってくれるか?」

「はい、それはもう
 
 でもケイジさん、何か急ぎの用なのでしょう?
 だったら私はここで降ろしてください
  
 ジュン君のことも私に任せてください
 ちゃんと迎えて帰りますから」

「そうか、じゃあそうさせてもらうよ
 すまないな、駅までは送って行くよ」

「はい……」


それからの京次さんは固く口を閉ざし、何も話すことはない。

流れる沈黙----

運転席と助手席、こんなにも近くにいるのに貴方をものすごく遠くに感じる時

貴方の中

ずっと眠り続けていた獣

目覚めゆく

それはもう、怖いほどに美しく。


そして---

ここに目覚めた、もう一人の男。

ソファーに横になっていた出雲は起き上がる。


「……いてぇ

 ここはどこだ?」
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