深海魚Lover
手が塞がった横田の後方に回った出雲は彼のポケットにサッと手を入れるが触れるものは何もない。

ガシャーン!

家中に響くのは床に落としたグラスの割れる音。

その音に気づき駆けつけた横田の仲間はどいつもこいつも厳つい風貌。


「オヤジッ!」

「何やってんだ、貴様ー」

「待て、動くな!

 これは何でもない」


テーブルにワインボトルを置く横田、ポケットの中、触れる手をぎゅっと強く握りしめた。


「いてぇ(痛い)」

「残念だったな」

「放せよ

 早くしろっ」


無理矢理に解いた手をポケットから取り出した出雲はその手を見つめる。

残る感触……


『お前は、誰だ?』

他人の空似……だとはとても思えない。


グラスの割れる音に慌てて部屋に現れた組員達に向かって横田は言う。


「見ての通り何てことはない
 
 若頭と話がある
 お前らは下がってろ」


横田の言葉に従い部屋に戻ろうとした男の肩を掴んだ出雲、その手にはワインボトル。
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