深海魚Lover
「けれど勝手な話だがそれは
 彼女を思っていなかった訳ではなく
 その反対、思っていたからこそ
 俺は嘆く彼女の傍には居られず……

 彼女に楽な暮らしをさせてやろうと
 緒澤組で一旗揚げてと躍起になって
 ……
 
 そんなある日だった

 彼女が別れたいと言い出して、俺は
 仕方がないとすんなり承知するつもり
 でいた、それなのに理美の浮気を
 知った俺は逆上した」


悲しく思いつめた表情の横田に出雲は言い放つ。


「何、急に惜しくなったのか?」

「いやっ、それもあるが怖くなったんだ
 俺の人生から理美がいなくなることに……

 そして、年の離れた男の傍で俺に見せたこと
 もない安心しきった顔で微笑む彼女の姿に
 俺は無償に腹が立った」


綺麗に着飾った妻の見たこともない姿----

ずっと傍にあると思っていた。

抱きしめ合い寄り添い眠る夜

二人遅くまで語り合った夢・未来、その全てが消え失せる。

それは横田にとっては堪らなく胸を刃物で切り刻まれ、その痛みは彼を苛立たせた。
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