深海魚Lover
「親父、頼んますわ

 あ~、はよ帰りたい」

「そんなに向こうの暮らしはいいか?」

「三年も住んどりましたら
 女の一人や二人、待たせてますんで」


黒須の言葉に微笑む横田の瞳は今もまだ窓の外を見つめている。


「では、私は仕事に戻ります」

「ああ、頼んだぞ」


その頃、横田の家を出た出雲は公園の傍に寂しく配置された電話ボックスを見つけ充に連絡を取る。


「もしもし、俺だ」

「アニキッ、アニキですか!
 無事なんすか?
 
 アニキ……」

「うるせえよ、ツル
 
 ちょっとは黙れ」

「すいま(せん)」

「おまえこそ、無事でよかったぜ」

「アニキ、心配してくれたんすかぁ」

「うるさい」

「アニキィ~」

「ミツル、代われっ

 カシラ私です、ウダです
 今どちらですか?」

「さあ、……らの辺りか
 
 頼む、迎えに来てくれ
 今日は酷く疲れた

 頭いてぇ

 ……駅がある、そこで待ってる」

「はい、ではすぐに伺います

 そうだ、カシラ
 辺りにシナガワの連中の
 気配はないですか?」

「ああ、大丈夫だ」

「あっ、ところでキョウとは会えましたか?」


出雲の声色が変わる。


「キョンが動いてるのか?」

「はい、カシラの居場所を知……」

「何やってる
 バカやってんじゃねえぞ!」

「すいません、カシラ……
 カシラ?」
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