深海魚Lover
----出雲を乗せて走る車。

その車内・後部座席、出雲の負傷した手に紙袋から取り出した買ったばかりの消毒液を垂らす充。


「ツル、いてぇだろーが!」


自分の方へ手を引っ込める出雲。


「ちょっ、液がたれますって

 俺、しみるって言いましたよね?」

「ちょっとどころじゃねえよ」

「そりゃ、こんなにも酷い傷だと
 仕方ないっしょ

 本当に病院に行かなくていいんすか
 化膿しても知りませんよ」

「いいって面倒だ

 ツル、おまえこそ病院行けよ
 なんだ、その面」


緒澤組の奴らにひどい目に遭わされて、顔が腫れ上がっている充。


「俺のことはいいっす

 ほらっ、手貸してくださいよ
 早いとこ包帯巻きましょう」

「それにしても大事に至らなくて
 本当に良かったです
 
 二人とも」


助手席に座る右田は出雲にそう声をかけた。


「ウダのアニキ、アンタは知ってたのか?
 俺が親父と血がつながってねえこと」

「いえっ、私は何も」

「俺達も先日知ったばかりですよ」

「ツル、お前知ってたのか?」

「ああ、はい、事務所で……」


事務所----そう言えば垣村と何やら話をしていた充の様子を思い出した出雲。


「そういうことか」

「アニキ、すみません
 
 俺、アニキに伝えることできなくて……

 加瀬親分とアニキのお母さんが
 その、内縁関係にあって
 元の姓は横田……」
< 379 / 410 >

この作品をシェア

pagetop