深海魚Lover
「アニキッ!?」

「行くぞ」


出雲だけを残して、扉は閉まる。


昏睡の中----

幼子をその腕に抱く、加瀬。


『大丈夫、なのか?

 こんなにもひ弱で

 ……

 何、大丈夫だ!

 俺に任せろ』


とても小さな、小さな命……頬擦りをした大切な命。


時は過ぎ----加瀬組長はこの世を去った。


全ての行事を終え、一息つく喪服を着た出雲。

右田の話す声を聞きながら、一つに縛っていた髪をほどく。


「親父だって必死だったんだと思いますよ
 いつ狙われるかもわからない我が子の命
 
 極道の息子、それも長、頂点の

 生半端な根性のない弱い子供に
 育てるわけにはいかないでしょうから」

「だとしても、俺はしねえよ

 苦しめるぐらいなら……

 ガキは要らねえわ」

「そんな、それは困ります
 跡継ぎは必要です」

「何言ってやがる
 古いんだよ、お前達は」


顔を見合わせる、右田と垣村。


「そうですね
 本当のところ、この機会に
 私達は引退した方がよろしいのでは……」

「バーカ
 
 ウダ、逃げてんじゃねえぞ 
 俺と心中しろや」

「はい、もちろんそのつもりです」
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