深海魚Lover
「キャッ!痛ッ」

「よそ見して歩いてんじゃねえよ!」

「すみません」

「チェッ!イテェ」


私がぶつかった相手は不良少年のようで、金髪に、虎の刺繍がされたド派手な上着を羽織ってた。

少年は煙草を銜え、副流煙が舞う。

何事もなくその場を立ち去ろうとしたその時、私を呼び止める声が聞こえた。


「ちょっと待てよ!」


やっぱりその少年は、易々とは引き下がるタイプではない。


「……待てって!」


そう言うと少年は地面に投げた煙草を靴で踏みつけて、私のお気に入りの鞄に汚い手で触れた。


「これ、置いて行こうよ」

「えっ!ごめんなさい

 それは困ります」


私は自分の方へと鞄を思いっきり引っ張った。

だけど、少年は私の鞄を掴む手を放さない。

他にも荷物を手に持ってる私、鞄はいとも簡単に少年に奪われてしまう。


「返して下さい」


私の鞄の中を覗いて物色し出した少年は言う。


「ぶつかったのはアンタの方で
 俺の手、超痛いわけ
 
 わかるよね?
 慰謝料っつうの

 ……

 イテェ~、イテェーよ

 何すんだテメー!」
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