甘く熱いキスで
ライナーはユリアの腕を擦りながら、ゆっくりと息を吸い込んだ。

「落ち着いて……ください。私は、死にません。貴女が……助けて、くださったのでしょう?ゆっくり、息を……」

おそらく呪文を放ったのはユリアだが、妊娠の影響か胎児の気も混ざったそれをコントロールできていないらしい。ユリアとライナーを傷つける意思はないが、元々自分の力の制御が甘かったユリアにはもう1人分の気を使いこなすのは難しいだろう。

ライナーは泣き続けるユリアの額や目じりにキスを落とし、「ゆっくり、息を吸って、吐いて」と言いながら自分もそうやってみせる。

何度か繰り返したところで、ユリアは浅い呼吸ながらライナーに合わせて息をし始めた。嗚咽交じりだったそれが、だんだんと深く規則正しいものになっていく。

「よく、感じてください。これは……貴女の炎です。貴女と、私の……」
「私と、ライナーの……?」
「えぇ」

頷いてユリアの下腹部に手を添える。すると、ユリアは震える息を吐き出して少し乱暴に目を擦った。

ユリアの目元は赤く腫れてしまっているが、その瞳はしっかりとライナーを映す。それから静かに炎が威力を弱め、ライナーはユリアを庇うように抱きしめ、呪文を唱えながら炎が消えるのを待つ。
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