甘く熱いキスで
「ライナー!」

演習が終わると、ユリアは真っ先にライナーに駆け寄った。鶯色の訓練着の袖で汗を拭いながら出口へと向かっていたライナーは、ようやくユリアに視線を向けて立ち止まってくれる。

他の兵士たちの好奇の視線を強く感じながらも、ユリアはそれを無視してライナーにタオルを差し出した。ここへ来る前に、城の廊下ですれ違った侍女が運んでいた洗濯物の中から奪い取ったものだ。洗い立ての良い香りがするふわふわのタオルは、王族が使う最高級の質である。

ライナーはユリアの手元に視線を向けたものの、タオルを受け取ろうとはせず、ユリアは首を傾げた。

「どうしたの?これを使って」
「いえ……あの、汚れてしまいますから」

ユリアが更にタオルをライナーの方へ押しつけるようにすると、ライナーは一歩足を引いて首を振る。

「何を言っているの?タオルは汚れを拭くために使うものでしょ?」
「汚れにも、限度があるかと思いますが……」
「もう!」

引かなさそうなライナーの態度に、このままでは拭く前に汗が引いてしまうと思ったユリアは、じれったくなってライナーの腕を掴んで引き寄せた。

ライナーは不意打ちだったのか、簡単にユリアの方へ身体を傾ける。ユリアは少し背伸びをしてライナーの首筋を伝う汗を拭きとった。

「限度なんてないわ。汚れは汚れよ。汚れたらまた洗うのだからいいの」
「ユリア様、ドレスが汚れてしまいます」
「洗えばいいわよ。ほら、もう汚れてしまったわ。後は自分で拭いて」

そう笑ってタオルを差し出すと、ライナーは素直にそれを受け取って、額に浮かぶ汗を拭いてくれた。ユリアは少し困惑した様子の彼を見て、ふふっと笑う。
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