甘く熱いキスで
第二章:熱く、激しく

軍人の運命

「失礼します。父上、お呼びでしょうか」

ライナーがカぺル邸の一番大きな書斎に足を踏み入れると、当主であるベンノ・カぺルが珍しく笑みを浮かべて顔を上げた。

「ユリア姫を落としたらしいな?タオブン牽制のためとはいえ、お前は高い買い物だったからな……これくらいの恩返しは当然だが」

卑しい笑い方をするベンノは蓄えている白髭を撫でつけて、フンと鼻を鳴らした。それからいつものように蔑みの光を宿した目でライナーを睨みつけてくる。

「さっさと孕ませて降嫁させろ。いいな?」
「……はい。では、朝の演習がありますので私はこれで」

ライナーはゆっくりと顔の筋肉を動かし、笑みを浮かべた。それから礼をして、書斎を出て行く。

もう少しだけの辛抱だ。カぺル家に買われたのは、運が良かったと思う。これだけ早く、フラメ城へ……ユリアに会えるとは思っていなかった。

幼少期、祖父と過ごした屋敷を思い出させる広く長い廊下を歩きながら、ライナーは血が滲むほど拳を握りしめていた。

「運命……」

ライナーの呟きは静かな廊下に消えていく。

そう、これは運命だ。ユリアとライナーの運命は、生まれたときから決まっている。

ユリア・ブレネン――ようやく会えた、ずっと近づきたいと思っていた王女。強気で、純粋で、何も知らない娘――…

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