甘く熱いキスで
「ねぇ、ライナー。精鋭部隊は貴方のことを無視したり、睨んだりする人ばかりなの?」
「無視……ですか?訓練や仕事の話はきちんとしますし、それ以外での交流がないだけで、特にそういったことはありませんよ」
「嘘つかないで。そうじゃないことくらい、私にだってわかるわ」

なんだか子供をあしらうような言い訳に、ユリアは口を尖らせた。

中庭へと入り、日当たりのいい場所を選んで呪文を唱えると、赤く炎の絨毯が芝生の上に燃える――視覚的な炎なので熱くはない。ユリアに促されて座ったライナーは、バスケットの中から食べ物を取りだして並べてくれる。

「では、私が養子だから皆様の気に障るのだということもおわかりになるでしょう?」
「でも、貴方は実力もあるし、努力家でマナーもきちんとしているわ。それを認めないなんて変じゃない」

ユリアはそう言って、おしぼりで手を拭いてからサンドイッチを頬張る。ライナーもクスッと笑ってから手を拭き、それを手に取った。

「ユリア様は変わっていますね。私のことを努力家だと言う人間は、他にはいません」
「どうして?」

ユリアが驚くほどに洗練されたマナーや秀でた呪文能力を身につけることは、並大抵の努力ではないはずだ。もちろん、生まれ持っての才能もあるだろうけれど、そんなものは磨かなければ光らない。

「自分より劣る人間が何の努力もせずに、突然自分より上の人間になったら、誰だって『どうして』と思うでしょう」
「劣るっていうのは、身分の話をしているの?」
「まぁ……そのようなものです。何も、お調べになっていないのですか?」

ユリアの問いに、なんとなく歯切れの悪い返事をするライナーは居心地が悪そうに眉を下げ、水を飲んだ。上下に動く喉と、濡れた唇にドキリとしてユリアは少し視線を泳がせる。
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