甘く熱いキスで
一体、ライナーに何があるというのだろうか……と考えていたのはカイも同じだ。尤も、この従兄弟はようやくその辺りの違和感を覚え始めたようだけれど。

そういうユリア一直線なところはユリアに似ている。恋人や夫婦になるには似過ぎていると言うべきなのかもしれない。

「軍人とは言っても、1人の国民だからね。調べるのは躊躇っていたのだけど……悠長なことは言っていられないな」

今、カイが持っている情報はユリアと同じ。ライナーがカペル家に入ってからのことだけだ。

先ほどのユリアの言葉――ライナーの両親がタオブンとファルケンの対立に逆らって恋に落ちた――それは、ユリアの同情を引くために都合のいい話とも言える。それが本当であっても、嘘であっても、ライナーが人々に疎まれている事実があるため信憑性は高くなる。

何にせよ、ユリアは周りが見えていなさすぎる。

イェニーはよくヴォルフに似てしまったことを嘆いているけれど、ヴォルフはきちんと自分の責任を理解しているし、一国の王ということもあって情報収集は欠かさない。

「お父様も、若い頃は無茶したこともあるってエルマー伯父さんが言っていた」

カイはアルフォンスにも聞こえないくらいの小さな声で呟いた。

ヴォルフがそういった経験を経て成長したのなら、ユリアもそうなるのだろう。それを見越して、ヴォルフはできるだけユリアを自らの意思で動かそうとしている。しかし、ユリアが無茶をする意味は……ヴォルフがそうするのとは、また違ってくる。

カイは拳を握り、アルフォンスに向き直った。

「とりあえず、アルはシャワー浴びてきたら?会議に遅れたら、エルマー伯父さんにどやされるよ。それから、今夜は僕の部屋に来て。ユリア姉様のこととライナーのこと、気になるでしょう?」

そう言って、カイは降りてきたばかりの階段を上り始めた。
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