僕は君の名前を呼ぶ
【彩花 SIDE】
こんな時間にお母さんが家にいるなんて、いつぶりだろう。
いつも、お母さんは朝早く家を出て遅く帰ってくるから。
お母さんとふたりきりっていうのが、なんだかくすぐったい。
「お母さん。今日青木くんといた理由なんだけどね、進路の話を聞いてもらってたの」
唐突に予想もしていなかった話を振られ、びっくりしているみたいだった。
「心理学を学んで、学校の先生になりたい。大学生になったら家を出たいの」
「心理学…?そんなの、一人暮らししなくても近くの大学で学べるんじゃないの?教員免許なんてどこでも取れるじゃない」
いますぐにでも家を出たいのに、どうしてそういうことを…。
わたしはあの人ともう一緒に住みたくないだけなのに。