僕は君の名前を呼ぶ
地元にある地域密着型の予備校。
小学校や中学校で見たことある顔もちらほら。
橘とのねじれに救いの手をさしのべてくれたのは、そんな環境で知り合った意外な人物だった。
「…あ。」
「あ?…あっ!」
予備校に通うのも慣れてきたある日の放課後。
俺の目の前には、今一番会いたくない人物が。
「夏樹くん、でしたっけ」
背中に嫌な汗が伝う。
「タメみたいだし夏樹でいーよ、彼氏クン。あ、彼氏じゃないんだっけ」
ニヒヒといたずらっぽく笑う、“夏樹くん”。
もはや、嫌味にすら聞こえない。
「彩花と俺の関係、気にならない?」
「別に…」
気にならないと言ったら嘘にはなるけど、返ってくる言葉は予想がついている。