僕は君の名前を呼ぶ


地元にある地域密着型の予備校。
小学校や中学校で見たことある顔もちらほら。


橘とのねじれに救いの手をさしのべてくれたのは、そんな環境で知り合った意外な人物だった。


「…あ。」


「あ?…あっ!」


予備校に通うのも慣れてきたある日の放課後。

俺の目の前には、今一番会いたくない人物が。


「夏樹くん、でしたっけ」


背中に嫌な汗が伝う。


「タメみたいだし夏樹でいーよ、彼氏クン。あ、彼氏じゃないんだっけ」


ニヒヒといたずらっぽく笑う、“夏樹くん”。

もはや、嫌味にすら聞こえない。


「彩花と俺の関係、気にならない?」


「別に…」


気にならないと言ったら嘘にはなるけど、返ってくる言葉は予想がついている。


< 208 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop