僕は君の名前を呼ぶ
“付き合う”という行為がよくわからないまま時間だけが経ち、結局、実質は仲のよい友人止まりだったらしい。
微妙な関係はそのまま続き、中学3年生にあがる前に夏樹の父親の都合で地方に引っ越すことに。
「俺はケータイ持ってたけど彩花は持ってなかったし、自然消滅した…ってやつ。好きって自覚したときにはもう遅かったよ」
「なんで夏樹くんはここにいるんだ」
「地元凱旋っつーの?父親の仕事も落ち着いたし、受験するならこっちの大学の方がいいかなって」
「新しい家は高校に近いとこ選んだから、元いたところじゃないけどな」と夏樹は笑って言った。
「そっか…」
「何辛気くさい顔してんの?やめろよ」