僕は君の名前を呼ぶ
白い歯を出してこちらに向けて笑ってくる。
夏樹のマイペースさにあきれを通り越して、名乗る気力も失せた。
空になった缶に、爪がめり込んだのを静かに感じた。
22時前に予備校の授業が終わり、外に出ると夏樹がいた。
「よっ、海斗。俺まだここらへんの道わからなくて。一緒に帰ろーぜ」
正直、夏樹みたいなタイプは苦手だ。
隆太と少し似ているような気もするが、どうも違う。
本当にこんなやつが橘と付き合ってたのか…?
「まあ、いいけど。家どっち」
苦手なタイプだけど、なんかわからないけど、突き放したりはできなかった。
「海斗、彩花のこと大好きだろ」
「…置いていくぞ」
「悪いって、ははっ。彩花のことを好きだったやつらと同じ目ぇしてるからさ」
「そんな風に見てないし」