僕は君の名前を呼ぶ
「にしても、彩花の笑顔はすげぇよな。見るものすべてを虜にしちまうというか」
俺もそのひとり、と照れくさそうに夏樹は笑った。
「…もしかして夏樹くん、知らないのか?」
「何が?」
俺からの唐突な質問でびっくりしているようだった。
やっぱり、知らないのか。
「いや、何でもない。知らないならいい。」
「…俺と離れてた間に彩花に何があった?」
夏樹は声のトーンを落とした。
夜の住宅街に不気味に声が響いた気がした。
「そんな顔してねぇで言えよ。言えつってんだろっ!」
俺の表情から、橘にどんなことが起きたかきっとさとったのだろう。
さっきまでの低い声から一変して、大きな声が俺の耳を刺激した。