僕は君の名前を呼ぶ
忘れるわけないじゃん。
わたしだって、頭の中は夏樹くんでいっぱいだったんだよ。
夢の中で、少し幼い顔で笑ったあのときの夏樹くんはもういない。
「わたしこそごめんね」
「なんで彩花が謝るんだよ」
「夏樹くんが転校するときに、解放してあげればよかった」
「…彩花?」
「夏樹くんのことだから、離れている間も彼女作らずにいたよね…?わたしが、曖昧な関係で夏樹くんを束縛してた」
夏樹くんはひょうきん者が集まるグループにいて、いつも周りを笑わせているような人だった。
でも、メリハリがちゃんとあって、曖昧な関係の中でもわたしのことをよく考えててくれてた。
わたしは、そういう夏樹くんが好きだったんだ。
「そんなことっ…」
一度、声を荒げた夏樹くんはトーンを落として続けた。